電子書籍、書店限定でダウンロード販売してはどうか 書店は街の文化センター、書店の衰退は文化の衰退

ユニークなのは販売方法で、電子書籍をダウンロード購入する場所を書店に限定する。

「街の書店は地域の文化センターであり、書店がなくなることは文化の衰退を意味する」。柴崎代表取締役は、紙媒体の書籍の重要性を強調する。書店と出版社の両方が利益をあげる仕組みを構築する必要があるという。今後は、紙媒体と電子媒体で、市場の住み分けが起きるとみている。同社は書店経由の書籍販売を維持しつつ、電子書籍の利便性を享受できる商流を描こうとしている。

これはひどい。

確かに紙媒体の本屋というのは江戸時代以降、情報の発信におけるハブの1つとして機能してきた。だが、これはあくまでも情報が本屋にあったというだけであって、本屋だから(例えば、その営業形態ゆえに)情報があった、という訳ではないのではないだろうか。今日では記事中でも指摘されているが、ロジスティックにおいてはインターネットが小売店の代替的な役割を果たすことができるようになってきている。そうなった場合、情報のハブが書店ではなくなることになるが、これを旧来書店が果たしてきた功績の大きさに配慮し、この技術革新を押しとどめようというのがこの考え方の根底であろう。人間に対しての年金制度はあるが、産業に対しての年金制度はいらない。

更にいえば、同じ小売価格であったら書店(小売店)の利益は少ないほど出版社の利益は多くなる訳で。出版社にしたら、ダウンロード販売による価格破壊と他のマージンが減った分著者の印税収入が増やされることによる実質的収入の逓減が主な論点である以上、ダウンロード販売がこの形式をるとしたら、確かにこれらの課題は解消される。ただし、ダウンロード販売の利点の一つであるアクセス性が紙媒体以下(紙媒体は、端末を持ち歩いていなくても購入できる)になることになる。これではダウンロード販売が盛んになるはずがない。まあ、ネットでのダウンロード販売を押しとどめるために、赤字前提でそれに対する対抗馬をぶつけるという不毛なことを目的とする限りは適当な戦略であるようにも見えるが。

恐らく、このダウンロード販売が実現するとしたらAmazonやBookwebみたいなオンラインのには解放しないだろう。その結果として、「紙の本は、自宅からでも購入できる。」「電子書籍は、書店に行かなければ購入できない」となる訳で…いやはや。

参照記事:Report: Digital Coupons Outpace Printed Coupons by 10 to 1

マクドナルドのかざすクーポンだとか、ホットペッパーのクーポンだとかのように紙媒体によらないクーポンは日本でも増えてきましたが、アメリカでは更に状況が進んでいるようです。

米オンラインクーポン最大手のCoupons.comよれば、2009年一年間での同サイト上のクーポン増加率は、新聞上のクーポン(切り取って使う奴ですね)の増加率と比べて、約10倍の増加率を見せたそうです。

元々のクーポンの量は新聞の方が流石に多いでしょうが、冒頭記事によればアメリカの人口の20%が使用している計算になるのだとか。一世帯で使用するのが一人であることも多いと考えると、実質的には結構普及していると見て良さそうです。Coupons.comのサイトを見ればわかるのですが、「切り取る」→「印刷」によって、通常の新聞から切り取るクーポンと同等の感覚で使用できるのが大きそうです。ぱっと見ただけでもケロッグ(主食でしょ?)とか実用性が高そうなクーポンが…

日本においては、現状ではクーポンをまとめて紹介しているサイト(Yahoo!クーポン等)はありますが、このようなネットから印刷するクーポンを統一的に扱う事業者は存在しないようです。これ、ビジネスになると思うんですけどねえ。Yahooクーポンがこういうふうに改装したらものすごい利益が出そうな気がします。もっとも、日本における注意点としては、国民間での異常な割合での高機能携帯電話の普及と、携帯電話に依存した形式でのクーポンが(マックじゃないですが)多いので、そことの住み分けをうまくできるかが鍵になりそうです。携帯電話は現在の位置をコンテンツプロバイダに送信できるので、ローカル性では敵わない…

別の観点からの補足:

地味にCoupons.comの躍進にはそのドメイン名も影響が大きいのではないでしょうか。インターネット白書2009年度版にも書かれていますが、アメリカ人はブラウザに直接探しているものを打ち込む(そして、多くのブラウザは.comを補完する)ことが多いため、クーポンを探している人の目につきやすいというのもありそうです。