でっていう電気通信事業法 (3)

2月 19th, 2010 | Posted by coq in 電気通信事業法

前の記事:でっていう電気通信事業法 (2)

今回は、現在の2ちゃんねるにおける規制を扱う。

まず、前提として挙げられるのは、2ちゃんねるに限らずウェブサイトの利用上の「規約」というのはあくまでも私人間の合意事項に過ぎない。即ち、例えウェブサイトの利用上の規約に反しても、それによる損害が発生するなどの事情がなければ、違法行為とはならない。即ち、あくまでも2ちゃんねるでの問題というのは民事上の問題である。

前の記事でも述べたが、電気通信事業においては通信の秘密の保護が義務付けられている(法4条1項)。これは事業者自身にたいしても適用される条文である。即ち、利用者-2ちゃんねるの間の情報の流れの内容というのは、原則として事業者が関与することはおろか、監視することすらできない。(接続先等、事業者がその役務を提供するにあたって知ることとなる事項については同条2項によって、それを守る義務が課される。)スパムフィルタが殆どのプロバイダで別契約となっているのにはこういう事情があるのである。ぷららが2006年にWinnyを一律規制した際に通信の秘密の保護に反するとして、最終的にはWinny規制は(スパムフィルターと同様に)役務本体とは別に提供する形をとるようになったのは記憶に新しい。

そもそも電気通信というのが電気的手段による信書であるという理解にたつのならば、通信の秘密というのは郵便で言うのならば、「中身をいじらないなら郵便配達人が封筒を空けて中身を見てもいい?」という質問に対する答えが「ふざけんなクソ野郎氏ね」であるのを考えれば当たり前のことである。封筒の中身は本人以外は、配達人だろうと他の誰だろうと見てはいけない。電気通信で用いられるのはこれと同じ論理である。

次に、2ちゃんねるが電気通信事業者に要望するところの事項について検討する。

2ちゃんねるが規制対象となった事業者に求めるのは何なのか。それは

  • 再発の防止

である。

大抵の事業者はこれについて、該当情報を発信した者に対して警告を送付し、多くの場合は同様の行為が行われた際は契約を解除する旨を告げるという対処をとる。

ところが、実際にはこの対応には問題がある。

  • 報告人制度
  • 通信の秘密

そもそも2ちゃんねるにおける規制解除のルートとしては、2ちゃんねるの代理人ではない一般人が「報告人」として、発信者が契約している事業者に対して再発の防止を要求するというものである。どちらかの代理人でもない者が「2ちゃんねると投稿者の間にこういう通信があって2ちゃんねるが迷惑しています、投稿者をなんとかしてください」と言っても、事業者としては「知らんがな」なのである。そもそも本当に2ちゃんねるが迷惑しているかは事業者としては(少なくとも法的には)確認できないからである。

そのため多くの事業者においては、この苦情は第三者による違反行為の報告として扱われた上で、事業者による判断で処分が決まる。第三者による報告である以上2ちゃんねるの規約は考慮されず、純粋に規約に従って対処すべき通信が行われたかによって判断される。

即ち、この場合の返信としては、2ちゃんねるにとって良い表現であれば「調査の上、必要に応じて対応させていただきます」であり、悪い表現であれば「第三者の方に報告されても対応は保障できかねます」となる。これらは両方とも、「こっちで規約違反か判断して対処するよ」というだけである。前者の場合に、報告人に対して何らかのアクションを行った旨の返信が来る場合があるが、これは単純に報告した者に対する社会的儀礼に過ぎない。…①

ここまで読めば、現在の(★報告人以外の)報告人制度が実質的には大きな意味を持たない事がわかる。BIGLOBEとSo-netは、正式な代理人でないと対処しないと批判されているが、それは単純に後者に類する表現を用いるだけである。通信の当事者からの苦情以外は、あくまでも情報提供の一つに過ぎない。

その上で、★報告人によって報告される、すなわち2ちゃんねるの正当な(法的)代理人によって苦情が伝えられる場合について検討する。上で述べたとおり、事業者には通信の秘密を保障する義務がある。即ち、特定個人が特定の通信相手(2ちゃんねる)に対し、特定の情報を発信するか否かの監視を行うことは、明確に通信の秘密を侵害する。ましてや、それが一定の条件を満たした場合に通信を拒否する場合など言うに及ばない。即ち、厳密な意味での再発の防止にはなっていないのである。…②

では、次にその利用者の書き込みが問題となり、2ちゃんねるがそれについて苦情を出したら契約を解除するというのはどうか。結論から言えば、これも難しい。あくまでも各事業者の規約に定められているのは、違反行為に対する契約解除(auはau通信サービス契約約款100条1項5号及び別記21、DoCoMoはiモード利用規則(FOMA)34条)であって、それに該当するか判断するのは事業者である。2ちゃんねるという一私人が「次俺が苦情言ったら契約解除してくれ」などというのは通用しない。苦情は受け付けるが、事業者が対応するのは基本的にはそれが規約違反であると判断される場合だけである。法25条においては役務の提供義務が定められているが、全回線数に対する回線数が一定の割合を超える(携帯電話の場合は25%)登録制事業者(指定事業者)については、同条2項において以下のように定められている。

指定電気通信役務を提供する電気通信事業者は、当該指定電気通信役務の提供の相手方と料金その他の提供条件について別段の合意がある場合を除き、正当な理由がなければ、その業務区域における保障契約約款に定める料金その他の提供条件による当該指定電気通信役務の提供を拒んではならない。

携帯キャリアがただのプロバイダと違うのはこのドミナント規制である。即ち、契約解除にあたってはインフラとしてのサービスを提供しないことが正当とみなされる程度の合理性が求められるのであって、別に法に抵触しない私人間の紛争程度ではこれは満たされないであろう。

つまり、規約違反行為に対して、「再発の防止をしてくれ」と言われても「今回の件は規約違反だったので警告する。だが、再発の防止と言われても、現時点では保障はできない」としか回答のしようがないのである。…③ 規約に違反していないと判断された場合は、そもそも携帯キャリアは対応することが法律上できない。

大抵の事業者の対応窓口は②の根本的な対策になっていない対策で「利用者に警告し、再発防止策を行った(キリッ」と答え、それで2ちゃんねる側もよしとしている。しかし、DoCoMoは流石元電電公社、しかも今日の電気通信事業法を恐らく一番良く理解している上に問い合わせをきちんと法務に上げる。その結果として帰ってくるのは、正確な表現である恐らく③である。それを一般人が見て判断する結果が

この返答では遺憾ながら規制継続せざるを得ません。

なのだろう。

では、どのようにすればいいのか。選択肢はいくつか挙げられる。

  • 2ちゃんねるが事業者と別途契約を結び、通信内容の監視をすることを認める。通信の秘密は、当事者の一方の同意があれば侵害されたことにはならないからである。(信書で言えば、自分が差し出す信書や受け取った信書を公開するのが問題ないのと同じ)
  • 2ちゃんねるの影響力の大きさに特別に配慮し、2ちゃんねるで規制されている現状が役務の正常な提供に著しい障害を及ぼすとして、特例的措置を行う。(2ちゃんねるに書き込めないインフラなんてインフラじゃない、という2ちゃんねる過大評価説)

なお、本来の正しい2ちゃんねる側の対応としては、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任法)に従っての情報開示請求→民事等のコンボを決めるか、それに該当しない合法行為に対しての対策が必要な場合は単純に規制をかけることが現在の法制度においては想定されていることを補足しておく。

次回:未定

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