でっていう電気通信事業法 (2)

2月 17th, 2010 | Posted by coq in 電気通信事業法

前の記事:でっていう電気通信事業法 (1)

では、そもそも、なぜ電気通信は自由化される際にこうした規律に服することになったのだろうか。前の記事で述べた銀行業や保険業、あるいは他に統制されている電気事業やガス事業等との共通点、もしくは他の産業との違いは何なのか。

結論から述べると、この違いは、「社会インフラであるか否か」による。すなわち、電気通信産業は今日の国民が健康で文化的な生活を営むにあたって最低限必要となる産業のうちの一つであり、電気通信が(制定当時の主たる想定対象は固定電話であったが)受けられない、もしくはそれが粗悪なものしか提供されないというのは問題であるとされる(前者についてはNTTにユニバーサルサービスの義務が課されている)。それを防ぐために必要な規律を定めたのが電気通信事業法である。

もっとも、電気通信事業法は先に述べたようなインフラとは統制の仕方が大きく異なり、積極的な規律が行われている電気やガスに対して電気通信事業者に対して行われているのは、消極的な規律、即ち、道を踏み外さなければ基本的に自由という形の規律である。具体的には、兼業規制や定期検査等の介入は行われず(業務性質に関する介入としては回線図等の提出のみである)、さらに特定の事業者の参入を防止する規定は、一部の大規模な事業者(現登録制事業者、旧一種事業者)についてしか存在しない。また、料金についても届出制事業者については任意となっており、多種多様な料金体系でのサービス提供を可能としている。

しかし、消極的な統制といっても規律が行われているのは事実であり、通信の秘密の保障(3、4条)に始まり、問い合わせ対応義務(27条)や、その他不当料金の禁止や事故発生時の速やかな復旧、サービス終了前の利用者への周知義務が法によって事業者に対して求められているところである。

より穿った解説を加えるならば、旧来、信書(手紙のこと)は社会生活を形成する意思伝達のための手段として重要なものであった。電気通信も同様に意思疎通のための手段であり、電気的手段による信書に類するものであると考えた上で、信書と同様に通信の秘密等、安心して相手に対して届く、送信できるよう保障されることを求めたものである。前の記事で述べたとおり、同法の規律を受けると判断されるにあたって通信の相手が特定される(個々の通信の相手が不特定ではない)ことを要するというのはこの理由による。

つまり、「通信サービスは信頼できる運営してくれないと社会的に困るんだから、サービスやるんなら利用者が安心して使えるようなサービスじゃないと駄目なんだからね!」ということである。

ということで定められている電気通信事業法だが、残念なことに、書類を提出する手間を嫌ってか、あるいは総務省に事業を営んでいることを把握されることを嫌ってか、はたまた課される微々たる義務を嫌ってか、届出をすることなくこの事業を行う事業者は少なくない。このような行為は、法185条に従って処罰される(登録事業者は大規模な事業者であるため登録はほぼ必ず行われるため、実質的には16条の届出事業者のみが問題となる)のだが、前の記事でも書いたとおりこれによる処罰は極めて稀である。六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金という軽い刑からも推察されるとおり、届出事業者というのはもともと消極的な規律である電気通信事業法のなかでも軽い規律を受けるものであり、定めた側も警察の側も厳格な運用は求めていないのであろう。

登録をしていない事業者の一例として、様々な無料サービスを提供しているFC2が挙げられる。同社は日本在住の日本人によって運営されているが、米国内のペーパーカンパニー設立会社を利用し、現在、電気通信事業法による届出をしていない状態である。(実際は、日本国内において継続的に取引を行う場合は会社法187条に定められる外国法人の国内代表者の指定が必要であり、これをもって総務省は電気通信事業者として判断することになっている。この国内代表者をおかなければ、電気通信事業法による規律からは事実上逃避することが可能である。もっとも、会社法違反となりうことには留意が必要。)

また、そうでなくともいわゆるフリーメールや、メールが付属する無料ホームページ等のサービスにおいては、届出がされていない事例が目立つ。収益性を欠く場合には事業性が否定される可能性が高いため問題ないのだが、そうでない場合(広告運営、有料等)も非常に多い。電気通信事業者の届出番号を記載していない事業者ということでいえば、フリーメールでいえば55mail等の大手でも記載していない事例が見られる。

恐らく最大の抵抗となるのが、上で述べた義務のうちでも問い合わせ対応義務、事故発生時の復旧義務、サービス終了前の利用者への周知義務といった部分であろう。事故の復旧が時として難しいというのは、NTTデータのdoblog(これは厳密には単体では電気通信事業ではないが)でさえあれだけ復旧に手間取ったということからもわかることであるし、データ飛ばし→鯖落ち→夜逃げのコンボは無料サービスにおいてはしばしば発生することである。これらの対応と合わせての問い合わせへの対応にはそれなりのサポート経費が必要であり、ならはじめから届出しなければいい(電気通信事業者となる用件が登録/届出をすることなので、届出をしなければこれらの義務は発生しないことになる)という考え方である。

doblogの際に最終的に(一時的ではあるが)復旧→利用者への告知→閉鎖という手順を踏むことができたのは運営者がNTTデータという業界における超大企業であったからこそできたことであって、このような対応が中小規模事業者にとって難しいのは事実であろう。(参考までに、総務省資料より計算すると、届出事業者の9割以上が資本金3000万円未満の企業、もしくは個人事業者である。)

だが、資金的に厳しいというのは事業者の都合であり、それを理由にサービスの最低限の信頼性を欠如することは、現在の日本における電気通信事業法においては認められていない。個人的には届出を必要とするものが届出を行わないことに対する取締りとしては、もう少し厳格に運用されてもよいように思う。(即罰金を課す運用をすべきかは別であるが、少なくとも届出の義務があることを告知し、従わない場合は罰金を課す運用が適切なのではないか。)

もっとも、どのような事業が電気通信事業に該当するかということについては基本的には個別判断の積み重ねによって基準が形成されているのであって、近年の新しいサービス形態のいくつかにおいてはまだ事例が無い。それゆえに届出が必要であったと判断されるにもかかわらず届出をしていなかったというような場合についての配慮が必要であることは当然である。

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